2016(平成28年)4月1日、障害を理由とする差別を禁止するとともに、障がいを持つ人が障壁なく社会生活を送れるよう、「合理的配慮」を求める法律が施行されました。
この法律によって、性同一性障害の当事者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。この記事では、性同一性障害の当事者が生きやすくなるための新たな突破口につながる、同法について考えます。
障害とは。 性同一性障害も含まれるの?
一般的に言われている障害と同法や障害者基本法が考える「障害」は若干ニュアンスがことなり、この「障害」には性同一性障害も含まれます。
障害者基本法の第2条では次のように定義されています。
1 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁によって継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
2 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
この定義に沿って考えると、性同一性障害も含まれます。性同一性障害が同法の定める障害に当たることは、法律家の間でも認識されているようです。
ところで、性同一性障害は近年、精神科の病気ではないと考えられるようになっています。そして、同性愛が今では病気ではないとされるように「脱障害」の道を歩んでいます。そうなったら、この法律が適用されなくなるのでしょうか。おそらく、この定義からすると、仮に性同一性障害という病名がなくなっても、大丈夫でしょう。
当事者が戦う武器になる?
この法律がすごいのは、合理的配慮の提供が義務化されていることです。国や地方自治体などの行政機関に対しては、合理的配慮の提供は義務とされ、民間事業者は努力義務とされています。
合理的な配慮は、社会的障壁を除去することを目的に、実施に負担が重すぎない範囲で行うことになっています。
例えば、性同一性障害当事者にとって、各種証明書に性別欄があることは、社会的な障壁ですよね? 性別が書いてあるがために、プライバシーが侵害される、あるいは毎回余計な説明をしなくてはならないなど、性別が書いてあることによって社会生活に支障がでます。
したがって、性別欄をなくしたり、わからないようにすることは「合理的配慮」に含まれるかもしれません。
そのほかにも、あくまで実施する側の負担が重すぎない範囲でですが、
- トイレの使用についての配慮
- 性同一性障害や服装を理由とした入店拒否は違法
- 希望する性の服装の着用の許可
など職場や学校で、配慮してもらえるかもしれません。
わがままはダメ!!
ただし、この法律は障害者を特別扱いするものではありませんし、自分のわがままを正当化する法律ではありません! 自分のことだけでなく、配慮してくれる側のことも考えて、できる範囲での合理的な配慮を求めるようにしましょう!
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