睾丸摘出。手術当日。 直前までの緊張、終わったあとは・・・

性別適合(性転換)手術

昨年11月に受けた睾丸摘出(精巣切除)の体験談です。当時書いた日記がもとになっています。手術前に感じたことや、手術はどうやって進むのか、そして痛みは? 睾丸摘出を考えている方の参考になればうれしいです。

手術を決断して、申し込むまではどんな感じだったかは、前回の記事をお読みください。

「睾丸摘出 前夜」 私が睾丸摘出を決めるまで~申し込み MTF・ニューハーフのタマ抜き
私は、昨年に睾丸摘出手術を受けました。その時に書いた日記が出てきたので、ちょっと編集して、公開します。 ~~~~~~~~~~ 朝早く目が覚めた。 カーテンの隙間から差し込む、日差し。今日出かけないなんて、もったいない。...
この記事の中には、手術の体験が書いてあります。また、一部グロテスクな画像(不快感のないように加工してあります)も含まれていますので、そういうのが苦手な方や食事中の方はお気を付けください。

 

手術前日の夜は、とても長かったです。長年連れ添った自分の身体の一部との最後の時を惜しむかのようでした。

いくら私を男性らしくさせ、苦しめているタマちゃんとはいえ、明日からなくなると思うと寂しくもなります。絶対に惜しくないと思っていたのに。夕飯を終えて、洗い物をすませ、寝る準備をしながら、しみじみと脚の間を眺めていました。

 

明日になればより女性に近づけるという想いと、自分が変わってしまう怖さ。男性の身体を持って生まれてきてしまった人が、女性として生きていく上で、痛みを避けることはできないのね、とつくづく思いながら、タマちゃんに「さようなら」を言いました。

いつもは不規則な生活をしていて、夜起きていることも多い私も、睾丸切除手術の前日はさすがに早く布団に入りました。しかし、緊張からかなかなか寝付けず。時計の音がいつもより大きく感じる夜でした。

もし一週間後とかに手術を予約していたら、一週間近く不眠に悩まされていただろうと思います。手術前はやっぱり緊張するものなんだなぁと、妙に納得。どんな手術でも緊張しますよね。

 

そして朝。アラームの音が鳴り、私は目を開け、「今ここにいる」感覚をしっかりと刻み付けました。

軽く朝ご飯を食べると、さっそく陰毛をそり始めました。結構長くなっていたので、初めははさみで切り、次にカミソリで処理しました。足の間にはさみを入れていると、いよいよという実感がわいてきます。後でわかったのですが、しっかりと剃っていった方がいいです。不十分だと、手術前に看護師さんに剃られます(痛いです)。

陰毛を剃り終えると、すーすーして何とも頼りない脚の間。手術は日帰りなので、帰ってくるときにはもういないのか、と思うとまた寂しくなりました。そんな気持ちもつかの間。着替えをして出かける準備を始めると、手術への緊張へとかわります。緊張と不安をいだきながら、玄関をでました。

 

スマホでルートを確かめながら時計を見ると、もうこんな時間。準備に時間がかかったので、出発が遅れたようです。そこで、いつもはバスを使っていますが、今日はタクシーで鉄道の駅へと向いました。いつもは数百円のお金も節約している私も、手術前の緊張と覚悟の前では、ちょっとした出費に惜しさはありませんでした。

駅について、電車に乗り、東京駅で乗り換えて、銀座の街へ。昼下がりの光が路面に反射してまぶしい、秋の銀座。私は急ぎ足で手術を受けるクリニックへと向かいました。スマホをで写真を撮る外国人観光客や友だちと楽しそうにショッピングをしている女性たち、そしてスーツを着たビジネスパーソンの間を歩きます。私は確かにそこにいながら、自分だけ街の風景を演じられていないように感じました。

クリニック周辺についてから、入り口がわからず路地の一区画を一周してしまった。雑居ビルが立ち並ぶ街で、目的の建物を見つけることは難しいですよね。

 

14:30ごろ到着。エレベーターが開くと、目の前にあったのは、ネイルサロンの受付です!!! びっくり。後でわかったのですが、そのクリニックの系列のネイルサロンでした。私の様子と恰好を見て察したのか、サロンの受付の人が「クリニックご利用ですか?」って確認。そうですと私が答えると、共有のラウンジに案内してくれました。クリニックの人を呼んでくるらしい。

すぐに女性のスタッフさんが来ました。そして、問診票を渡され、記入するようにとのこと。問診票を見ると、性別を書くところがなくて、当事者のこと考えてるって感じ。しばらくすると、クリニックのスタッフさんがもう一人でてきて、あいさつしました。その方も、MTFとのこと。問診票を記入し、スタッフに渡すと早速診察室へ。

女性のスタッフさんにいろいろ確認された後、性同一性障害と診断されているかどうか尋ねられました。診断されていることを伝え、あらかじめ用意していた、性同一性障害の診断書のコピーを提出。

女性スタッフさんは診断書をもって退出。

 

「こんにちは! 今日、手術を担当します○○です。」

しばらくして、小太りの男性医師が入ってきた。風貌は、美容外科の医師というよりは、医師らしくマジメそう。腕は確かに見えました。

※イメージです。

※イメージです。

簡単なあいさつを交わすと、性同一性障害かどうか、あらためて確認されました。

いつ頃から性別に違和感があったかや、今はどういう暮らしをしているのかなどの、よくある質問の後で、将来はどうしたいかも聞かれました。

「将来は、性別適合手術を受け、戸籍上の性別も変更して、女性として生活したいです。」

そう私が答えると、手術の適応があると判断したのか、先生は睾丸摘出の注意点について説明し始めました。

「睾丸を摘出することで精子や男性ホルモンがつくられなくなり、より女性らしくることが期待できます。一度、切ってしまった睾丸はいかなる方法でも戻すことはできません……」

そのほかにも注意点がいくつか話されて、私はこれから行われようとしていることの重大さの前に、立ちすくみそうになる私。

最後に質問はありますかと聞かれたので、実は迷っていることを伝えました。

「決断ができていないのなら、また今度の方がいいかもしれません。」

そう話す先生の表情には、美容外科の医師にありがちな商売人らしさはありませんでした。さすがに睾丸摘出のような責任が大きいものは、積極的には勧めないようです。

「でも、せっかく来たから、、お願いしようかなって……」

「では、手術をされますか?」

そう聞かれても、「お願いします」とすぐには言えなかったです。

(今日はやめておこうかな……)

「当院のスタッフにもMTFの人がいますので、その人と話してみましょう。」

 

医師の提案にしたがって、MTFのスタッフさんと話すことにしました。

睾丸摘出の経験者であるスタッフさんのお話は、性別移行をはじめたきっかけやその時思ったことなど、いろいろと共感できる部分がありました。なかでも「このまま、もし何かがあって、元に戻るのはいやだった」(から睾丸摘出を決めた)というところにめちゃ共感。

(って、そのためにやるんだよね?)

昨日、私が睾丸摘出を決めた理由の一つです。

いろいろ話しているうちに、決心が固まりました。「お願いします」と伝えると、受付の人がきて、お会計。その時、同意書にサインします。

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手術の同意書=「控え」を家で撮影

 

「トイレとか大丈夫ですか」と確認され、トイレにいって、タマちゃんに最後の別れをつげる。

※これもイメージです。

※これもイメージです。

15時10分ごろ。いよいよ手術室に案内されました。清潔感はあるけど、簡易的で、いかにも美容外科の手術室です。ベッドはフカフカで、汚れないように介護用シーツが敷いてありました。

「今から外に出ていますので、下半身は全部脱いじゃってください」

そう言って、二人のスタッフさんが出て行っても、しばらく服を脱げなかったです。

(ぼーっとしていてもしょうがない。覚悟を決めよう)

いきおいよく脱いで、ベッドに上がって、毛布を下半身にかけてまつ。

 

しばらくして、二人の看護師さん?(純女さん?とMTFのスタッフさん)が再び入ってきました。隠毛の剃り残しを処理してもらった。すこし痛い。

脚を伸ばしたまま、上から股間のところだけ穴の空いているブルーのカバーがかけられました。次に、茶色い消毒液とエタノールで脚の間から付け根まで、消毒されます。少ししみました。

 

準備が行われている間、MTFのスタッフさんと、ニューハーフについての話とかいろいろ人生論を語りあいました。この時に聞いて驚いたのは、性同一性障害じゃないのに摘出を希望する人も少なからずいるということ。びっくり。そんなことはないと思いたい。

 

「痛いですか?」

痛みが心配になった私は、聞いてみました。

「痛くないですよ。途中引っ張るときがあるんですけど、そのときは痛いかも。声をかけますね。」

こうやって話しているうちに緊張感が和らいできます。てか、スタッフさんのおかげですね。

 

そのうち、笑気ガスのマスクを当てられました。

「ぼんやりしてきたら教えてくださいね」

「はい。」

深呼吸しているうちに、だんだんと意識が遠のいていく。

目が自然と閉じて、笑い始めていることに気がつきました。「笑気ガス」っていうくらいですからね。でも、笑う人もいるけど、あんまり笑わないみたい。よくわからないけど、私に男性であることを強制している、社会・規範・人々に勝った気分なのでしょうか、それとも開き直りの笑いだったのかもしれないです。

そのうち、意識がかなり遠くなります。その時は、後頭部の内側あたりがジンジンして、下に落ちていくように感じました。麻酔の感じ方は人それぞれのようですが、私はそういうイメージがありました。

 

いつの間にか先生が登場した、ような感じがしました。そして、睾丸付近に麻酔が打たれてたみたい。

そうこうしているうちに、メスの音? バチバチって音が聞こえて、いかにも陰嚢を切っているような様子。
ピッピって音とかがして、手術が始まったんだなってわかりました。

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※イメージです。

ぼーっとしていられてのもつかの間。段々と意識がはっきりしてきて、強い痛みのあとに笑気麻酔がさめました。意識はぼーっとしているけど、何をしているのかなんとなくわかる状態でした。そのおかげでリアルな記事が書けることに感謝です。

すると

「引っ張りますよーー」

その声とともに、引っ張られる感覚。おなかの中の、タマタマをぶつけたときに痛くなるあたりに激痛がはしりました。

「あーーー!! いたぃっ」

予告通りめちゃ痛くって、かなり叫び声あげっていました。

「麻酔足りてなくないですか??」って言ったの覚えてる。そんなことわかるんだね。

となりのネイルサロンとか美容室の人まで、何事だと思ったようで、ざわめくような話声が聞こえてきた。その人たちもびっくりだよね。

 

その後、また痛みが何度かありました。あっ、今切ってるなってなんとなくわかりました。その瞬間は複雑な気持ちでした。

先にどっちタマをとったのかはわかりません。片方手こずってたのか、時間がかかっていたような気がします。

 

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※イメージです。

痛みの山は3回あったような気がしました。タマを引っ張ったときと、フクロを縫うときの痛みだと思います。

手術の間に、私は汗だくになっていました。看護師さんが、顔を拭いてくれたり、手を握ってくれたりして、はげましてくれました。

最後に、縫合のとき、また叫んでしまいました。外側の皮(陰嚢)を引っ張ってる感じと、針と糸を通しているのが感覚でわかりました。

先生(男)は私が目を開ける前に、退出してた。そういえば、来たときも笑気麻酔の後に来たから、配慮なのかな??

 

手術が終わると、そのままベッドから立つように言われました。壁の時計に目をやると、15:45を指していました。手術時間は35分ほどでした。

続いてテーピングです。傷口を保護するために、陰嚢と陰茎を固定する必要があるとのこと。テープできつめにしばられました。皮が伸びちゃってちょっと痛い。股を開いて仁王立ちみたいになって、二人の看護師さんに、前と後ろからテープをまかれるって、新鮮でした。

「痛がりなんですね(^_^;)」っていわれて、ちょっぴり恥ずかしかったです。あんなに悲鳴をあげたのはいつ以来かな(死ぬかと思った)。

でも、終わったらスッキリした! 手術前の惜しさとかはなくなっていました。

 

その後、いよいよ今まででお世話になった睾丸とご対面。白玉だんごを想像していましたが、赤色でした。砂肝みたいな感じ。一応、写真をとりました。

※画像を加工しています

※画像を加工しています。

ちなみにそのクリニックでは、持ち帰りはできないとのこと。
途中ですてる人とか、臓器売買とかあると困るからダメって言われた。いろいろあるのね。

 

その後いろいろ説明受けて、痛み止めとかをもらいました。

 

手術後の注意

  • 術後3日間は安静にして、固定のテーピングを続けること
  • 3日後に固定を外した後から、シャワーを浴びてもいいこと
  • 入浴は1週間後から。
  • 飲酒、喫煙は控えること
  • 激しい運動は1か月間はダメ
  • 糸は自然と無くなります
  • 術後の陰部周辺の痛みについて
  • 異常があれば連絡

 

すべてが終わったあと、またネイルサロンの前を通って、エレベーターで下へ。エントランスから足を踏み出すと、来るときあった銀座のまぶしい照り返しはなく、夕焼けの街には人々の日常がありました。ここ、銀座だったのね。急に新しい人生が始まったような気がしてうれしくなり、エントランスの前で写真を撮りました。

帰り道は、テーピングでしばられているせいで、とても歩きずらかったです。見る人が見たらタマ抜きしたとわかる、「大股歩き」で駅へと向かいました。

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少しふらふらしましたが、治療部位が痛むことはありませんでした。手術後は、女性と同性であるという感覚が強まったような気がします。途中で夕食を食べることもできました。

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自分ながらにうれしそうな表情です(笑)。そこには、手術前のとまどいや緊張、そして後悔するのではないかという不安はありませんでした。

万が一外出できなかったら困ると思い、途中ドラッグストアで食べ物などを買いました。治療部位から血が垂れてくることもあるといわれていたので、生理用ナプキンも購入(あまり使いませんでした)。

街を歩きながら、また一歩女性に近づけたと思い、かるい足取りで帰宅しました。

 

~~~~~~~~~~

睾丸摘出について詳しく知りたい方が、次の記事もご覧ください。

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